空としか言いようがない | コヘレトの言葉 1章1-2節,12章8節

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コヘレトの言葉 1章1-2節,12章8節

なんと空しいことか、とコヘレトは言う。
すべては空しい、と。日本聖書協会『聖書 新共同訳』 コヘレトの言葉 12章8節

空としか言いようがない

コヘレトを名乗る人物は、どんな時代を生きたのか。諸説ありますが、紀元前2世紀の、ユダヤ民族と大国シリアとの攻防戦(マカベア戦争)真っただ中だとする見方があります。ユダ・マカバイと兄弟たちの武勇伝の影には、子どもを生み育てながらも戦死者を出し続ける悲惨な現実と、終わりの見えない苦しみがありました。多くのユダヤ人がダニエル書の黙示思想に感化されて、今を生きることも、誰かを愛することもあきらめ、死んだ先の命に目覚めることを望むようになりました。そのような人の生と死を、コヘレトは「空」と呼んで、同胞たちの涙に寄り添います。しかし自らは、死ぬまで生き抜くことにこだわり続けます。

一昨年1月、新型コロナウイルス感染症が日本にも襲来、幾度も感染爆発と医療危機をもたらしました。今年1月末までに全世界で560万人を越える方々の命が失われました。そこにさらに、2月末、ウクライナでの戦争勃発です。悲しみが深く大きいのは、愛が深く大きいからです。悲しみがなくならないのは、愛がなくならないからです。悲しみは愛だからです。愛する人のあまりに短く儚い人生を、「空の空、一切は空」(聖書協会共同訳)としか、言いようがないではありませんか。

【祈り】

愛なる主よ、兄弟ラザロの死に憤り、心を騒がせ、涙された方よ、あなたと共に悲しみに留まらせたまえ。

二宮 創(太田伝道所)