2014年7月25日(金)フラニーとズーイ(2)〜太ったおばさん〜

 いかがお過ごしでいらっしゃいますか。田無教会の安田です。
 若い頃に出会った、サリンジャーの『フラニーとゾーイー』は忘れられない小説です。今年3月に村上春樹訳で『フラニーとズーイ』と題名も新しくなって出版されました。

 大学生のフラニーは、周りを取り囲んでいる人間は誰もが、俗物だと思っています。付き合っている彼氏も、友達も、大学の教授も…。物語が進んでいく中で明らかになるのですが、イエス・キリストも、です。そしてフラニーは、ついに倒れて、家に帰ってきます。
 フラニーに一所懸命語りかける兄のズーイ。最後の場面に太ったおばさんの話が出てきます。フラニーとズーイが子どもだった頃、出演していたラジオ番組があります。こんな番組のために靴を磨くのはいやだとズーイが言った時、兄から「太ったおばさんのために磨け」と言われます。太ったおばさんとは誰か。さっぱり分からないまま、靴を磨き続けたのです。
 今、青年となっているズーイは、フラニーに語りかけます。「太ったおばさんではない人間なんて誰ひとりいないんだよ。…太ったおばさんが、実は誰なのか、君にはまだわからないのか?…それはキリストその人なんだよ」。

 わたしが思い出したのは、「わたしの隣人とは誰ですか」と尋ねた人に、「だれが隣人となったか」と問い返されたイエスさまのお姿でした。いつも自分を見つめていたわたしは、わたしの隣に来てくださったイエスさまを発見する旅を始めたのでした。