2016年2月14日(日) 神につながる系図

 おはようございます。清和女子中高等学校、宗教主任の中山仰です。
 新約聖書マタイによる福音書の冒頭に系図が掲げられ、カタカナの名前がずーっと並んでいます。初めて聖書を読むとき、ほとんどの人が読み飛ばすと言われている箇所ですね。日本人の私たちにとっては、カタカナの名前ばかりですし、ほとんど知らない人ばかりですから無理もないと思います。

 中には系図好きと言われる方もいらっしゃることでしょう。研究者以外は別として、系図が好きと言われる方は、たいていの場合、自分のルーツを知るために必要なのではないでしょうか。ですから、このマタイによる福音書の冒頭の系図に、自分の親戚か遠い親戚の名前を見つけたら、関心をもち、注意深く読むことになると思います。それが可能なのです。この系図に自分も名を連ねることができるという興味をもって見てみましょう。

 事故で頸椎を損傷し、口で絵や詩を書いて有名な星野富弘さんは、私の従姉妹が結婚した相手が富弘さんの親戚にあたりますので、一応私も親戚になります。また吉本の漫才のお笑いコンビ、トレンディ・エンジェルズの向かって左の「たかし」さんは、息子の嫁の弟ですから、私が系図を作ったら、その中に入って来ることでしょう。それらの方々は血筋が繋がっていないので外戚になりますが、ささやかな自慢です。
 本流の方はどうでしょう。私の父方の祖父は、昔のヤクザでした。現代の丸暴と言われるものとは違いますが、渡世人を雇って砂防ダムや河川敷整備、鉄道の線路工事などをしていた人物です。私だけでなく、誰にも先祖や親戚には、様々な職業の人や人物がいることでしょう。中には恥ずかしくて名前を挙げられないという人が、一人や二人いるはずです。それでも自分のルーツであり、自分が存在するためには必要な人たちであったことは間違いありません。

 ユダヤ人は他の民族に比べて特別に系図を大切にしていると言われています。なぜなら彼らはこの系図の背後にある神と契約を結んだアブラハムの子孫であったからです。ユダヤ人は神に選ばれた特別な民族であることを誇りにしていました。

 この系図もあまりほめられる人ばかりではなさそうです。さっと見ただけで問題を持った人物が何人も存在しています。系図のちょうど真ん中あたりに「ダビデはウリヤの妻によってソロモンをもうけた」とあります。ダビデは忠実な部下ウリヤの妻と関係を結び、妊娠させてしまいます。そのあげく、不倫の発覚することを恐れて、ウリヤを最前線に押し出して敵に殺させるように計りました。夫を失った妻のバトシェバを、ダビデは王妃として迎えたのでした。このことは当然神の前に赦されることではありません。
 ダビデはユダヤの国イスラエルが一番領土を拡大させたときの王様です。国民の誰もが自慢する王がそのような恐ろしいことをしたのでした。
 その他にも近親相姦者があり、ユダヤ人は純血を誇りたいのでしょうが、この中にはユダヤ人以外の女性が二人含まれています。その内の一人は遊女でした。

 この系図を読み解くとき見えてくるものは、ユダヤ人の自慢ということではありません。むしろ彼らの罪や違犯や恥ずかしい行為にもかかわらず、神はアブラハムと結んだ契約を決して破ることはないということを印象づけるものです。
 人間の側が神に違反しても、神が取り消すことはありませんでした。普通私たちの間の契約は、片方が違反すると無効になるものです。しかし絶対者である神は、決して約束を違えず、アブラハムと彼の子孫だけでなく、アブラハムを経て全ての民族にまで祝福を及ぼすという内容を実現させています。

 神はその約束通り、ユダヤ人からしかもダビデの子孫から神の御子イエス・キリストを誕生させてくださいました。その神の愛の約束がこの系図の中に一本貫かれています。
 ですからイエス・キリストを信じる者は誰でもこの系図の中に組み入れられることになります。イエス様を救い主キリストと告白して救われた者は、例外無く誰でもこのキリストの後に名を連ねることになるからです。

 するとこの系図は実に自分にとって大きな意味を持ってきます。神の家族に入れられている約束の証拠でもあるからです。さらに系図の中の中心人物であるダビデ王のような大きな失敗をしても、心から悔い改めたとき、神は全面的に赦してくださったように、私の大きな罪をも主なる神はお赦しくださいます。
その名前を、天国に連ねる一人として扱ってくださるのです。
 神の家族の系図は耐えることはありません。主の祝福は限りなく、とこしえまでも続きます。