2013年12月31日(火) 小さな朗読会172「罪をおかした善き王」(「母と子の聖書旧約下」73章)

 ある日の夕方、ダビデはよく眠れないので床から出て自宅の屋上に出ました。もしかすると屋上のほうが涼しかったのかもしれません。あるいはダビデは月明かりを楽しんでいたのかもしれません。カナンの家の屋根はみな平らで、周りに囲いが巡らされていました。人々はよく屋上に座ったり寝たりしました。上から見下ろすと、近くの家の庭で一人の女が身体を洗っていました。大変美しい女の人でした。ダビデはしもべを遣わして女を呼び寄せました。
 この女の人は、ダビデのために戦場に行っているウリヤという人の妻のバテシバでした。バテシバはダビデに会いに来ました。ダビデ王は彼女を愛してしまいました。しかし、彼女はすでに結婚しているので自分の妻にするわけにはいきません。ダビデは悪いことを考えつきました。「ああ、その夫が戦場で殺されさえすれば彼女と結婚できるのに…。」ダビデは彼女を自分のものにしたいあまり、自分の将軍ヨアブに手紙を書き、ウリヤを戦死させるため一番激しい戦いの最前線に送るように言いました。ヨアブはこれに従いました。ウリヤは、町の城壁近くの最も危険なところに配置されました。そして、城壁の上から矢で射られダビデの望み通り死にました。ウリヤの妻バテシバは夫の死を聞いて嘆きました。

 しばらくしてからダビデは彼女と結婚し、そのうちに男の子が生まれました。
 神様はこのダビデのしたことを喜ばれませんでした。主はダビデのもとに預言者ナタンを遣わされました。ナタンは次のような話をダビデにしました。「ある町に二人の人があって一人は富み一人は貧しかった。富んでいる人は非常に多くの羊と牛を持っていたが貧しい人は自分が買った1頭の小さい雌の子羊のほか何も持っていなかった。この子羊は、彼の椀から飲み、彼のふところで寝た。彼は娘のように可愛がった。時に一人の旅人がその富んでいる人のもとに来た。その金持ちは、自分の羊か牛の1頭を取って旅人のために調理することを惜しみ、その貧しい人の子羊を取って殺した。」
 この話を聞いたダビデは大変怒り、「主は生きておられる。このことをしたその人は死ぬべきである。また、4倍の子羊を償わなければならない。」と言いました。預言者ナタンは「あなたがその人です。主はこうおうせられる。『私はあなたに油を注いでイスラエルの王とし、あなたをサウルの手から救いだし、あなたに王国を与えた。あなたには多くの妻もできた。どうしてこの悪事を行ったのか。ウリヤには一人の妻しかなかった。あなたはアンモンの人々の剣をもって彼を殺し、ウリヤの妻を取って自分の妻とした。私はこのために必ずあなたを罰する。』」と言いました。ダビデは自分がどんなに悪いことをしたかに気付き、大変に悔いました。ナタンは、「あなたが悔い改めれば主はあなたを赦されます。あなたは死ぬことはないでしょう。しかしあなたがこの悪事を働いたので、あなたに生まれる赤ん坊は必ず死にます。」と言いました。この言葉を残してナタンは去りました。彼の言った通り、赤ん坊はまもなく重い病気にかかりました。

 ダビデはこの子をとても可愛がっていました。自分が罪を犯したために赤ん坊が死にかかっていることも知っていました。それで、熱にほてった赤ん坊の顔を見るに忍びませんでした。一晩中ダビデは地にひれ伏して、子供の命を救ってくださいと神様に祈りました。家の者は彼を起こそうとしましたが、ダビデは起きようともせず皆と一緒に食事をしようともしませんでした。7日目に赤ん坊は死にました。ダビデのしもべたちは、子供が死んだと知らせるのを恐れました。「子の生きている間でさえ彼は我々の言葉を聞き入れなかった。その子が死んだのだからどんなに嘆くだろう。」とひそひそと囁きあいました。しもべたちの囁きあう様子を見たダビデは「あの子は死んだのか」と尋ねました。「死なれました」としもべたちは答えました。
 ダビデは地面から立ち上がり、身体を洗いさっぱりした服に着替えました。真っ先に礼拝をするため主の家に行きました。それから自分の家に戻り食事を取りました。しもべたちは驚きました。「このことはなんでしょうか。あなたは、子の生きている間は断食して泣かれました。今、子が死ぬと起きて食事をなさるとは」と尋ねました。ダビデは答えました。「子の生きている間に断食して泣いたのは、主が私を憐れんで、この子を生かしてくださるかもしれないと思ったからです。しかし、今は死んだので、私はどうして断食しなければならないでしょうか。彼を二度と帰らせることはできない。私は彼の所に行くでしょうが、彼は私の所に帰ってこないでしょう」と言いました。

 翌年、神様は、ダビデとバテシバにまた別の赤ん坊を与えられました。この子にはソロモンという名前がつけられました。神様はソロモンを愛されました。自分の罪を嘆いてダビデは美しい歌を作りました。詩編第51編です。

「ヒソプをもって、わたしを清めてください、
わたしは清くなるでしょう。
わたしを洗ってください、
わたしは雪よりも白くなるでしょう。
主よ、わたしのくちびるを開いてください。
わたしの口はあなたの誉をあらわすでしょう。
あなたはいけにえを好まれません。
たといわたしが燔祭をささげても、
あなたは喜ばれないでしょう。
神の受けられるいけにえは砕けた魂です。
神よ、あなたは砕けた悔いた心を、
かろしめられません。」