2016年3月22日(火) 小さな朗読会199「預言しなければならなかった人」(「母と子の聖書旧約下」98章)

 ヨシヤの時代に、ヨシヤの国に、あとで大へん偉くて重要な人物になる子供が生まれました。その名はエレミヤで、祭司の子供でした。

 まだ少年のころ、神さまはエレミヤに語り、「わたしは、あなたがまだ生まれないさきに、あなたを聖別し、あなたを万国の預言者とした」といわれました。
 これを聞いて、エレミヤは恐れました。彼は神さまに、「ああ、主なる神よ、わたしはただ子供にすぎず、どう語ってよいか知りません」といいました。
 しかし主は、「あなたはただ子供にすぎない、といってはならない。すべてわたしがつかわす人へゆき、あなたに命じることをみな語らなければならない。わたしがあなたとともにいるから、おそれることはない」といわれました。

 ヨシヤのとき、エルサレムの民は主に向かいました。彼の死後その息子が王になったとき、民はふたたび偶像を礼拝しました。
 ユダの罪があまりひどくなってきたので、神さまはもう、だまって見ているわけにゆかなくなりました。ユダの民に恐ろしい罰をおくるまえに、神さまは、預言者エレミヤをおくって彼らを警告し、神さまに立ち返らせようとされたのです。

 主はエレミヤにいわれました。「民がユダの町やエルサレムの道で何をしているか見たか。天の女神と呼ぶ月にささげるために子供はたきぎを集め、父は火をおこし、女は粉をねって菓子をつくる。彼らはあらゆる神々の為に灌祭をささげる」と。
 何度も何度も、神さまはエレミヤに、ユダの民のところにいって、神さまを離れて偶像を礼拝することの悪を説得するよう、いわれました。

 ユダの民ですでに捕われていた人が大ぜいいました。主はエレミヤに、エルサレムの門に立ち、残っている者に、もし彼らが悪の道を離れなければ、神さまがきびしい罰をくだされると伝えよ、と命じられました。もし、彼らが悔いれば、神さまは、彼らをこの土地にとどめておかれるでしょう。
 民は、エレミヤに耳をかしませんでした。主は預言者に彼らに次のように言わせなさいました。「もし悔いあらためなければ、わたしはあなたをわたしのまえから捨てる。北から恐ろしい国がきて、イスラエルの民が捕えられていったように、あなたがたを捕えてゆく」と。

 ユダの指導者たちは、エレミヤがたえずわざわいがくると預言し続けるので、エレミヤをきらいました。そして、もしやめなければ殺す、とおどしました。
 しかし、神さまは、エレミヤを守ることを約束して、警告をくり返せ、と預言者にいわれました。もし民が神さまに立ち返らなければ、神さまは彼らが捕えられるようになさるでしょう。

 エレミヤが指導者の意に反して神さまに従ったため、祭司たちは彼の足を足かせにはめて、こらしめようとしました。足かせとは、動けないように、足を固定してしまう木のわくです。
 まる一日エレミヤはそれにはめられました。足かせのために足はいたみ、失敬な人々がきて彼をあざ笑いました。
 翌日、彼はゆるされました。彼は、初めは、「もう二度と主の名によって預言はしまい」と自分にいいきかせていましたが、話さないではいられないことを発見しました。神さまの言葉が、もえる炎のように、心のなかにあったからです。

 エレミヤの預言は成就しました。

 エホアハズは父ヨシヤのように、神さまを恐れる王ではありませんでした。彼は自分のために、真赤に塗ったこはくの木で美しい城を建てました。彼は、ただで人々を働かせました。彼は自分の民に関心をもたず、貧しいものたちの面倒も見ませんでした。
 さきに、ヨシヤを殺したエジプト王パロ・ネコは、ユダの国に来て王を捕え、エジプトに連れていって、一生牢屋につないでおきました。
 パロ・ネコはエホアハズの兄弟エホヤキムを王にしました。また毎年、イスラエル人にたくさんお金を払わせました。
 こうして、呪いは成就しはじめました。

 エホヤキムは11年間おさめました。彼は名君ヨシヤの子でしたが、その前の王たちのように悪をしました。彼は意味もなく、また悪いとも思わないで民を殺しました。
 この悪い王とユダの全国を罰するために神さまは、「わたしは、早くて恐ろしい国であるカルデヤ人をおこそう。彼らはイスラエルの国をとって、それを自分のものにする。その馬はひょうより早く、夕べの狼よりも恐ろしい。その騎兵は遠くからくる」といわれました。
 エレミヤが、このメッセージをエホヤキムに伝えると王は、彼が民に預言できないように、牢屋につないでいました。

 主はエレミヤに、巻物をとって、それに、主が初めから語られたことをみな書くように、といわれました。
 エレミヤは、民のところにいけないので、書記バルクをよびました。エレミヤは主のいわれたことをみなバルクに伝え、バルクはいわれたことを書きました。
 それからエレミヤはバルクに「断食の日に主の宮にいって、すべての民が聞いているところで、あなたがわたしの口述にしたがって、巻物に筆記した主の言葉を読みなさい。彼らは主のまえに祈願をささげ、おのおのその悪い道を離れて帰ることもあろう」といいつけました。

 それからまもなく、断食の日が布告され、ユダの民はみなエルサレムにやってきました。バルクは、エレミヤの口述にしたがって書いた巻物をとって、みなに読み聞かせました。
 ミカヤという人がバルクの読んでいることに大そう興味を示しました。彼はつかさたちに自分の聞いたことを話しました。彼らはバルクをよんで、その書物を自分たちにも聞かせてほしいといいました。
 ユダの民が悪を離れないと、主が必ず罰する、というエレミヤの預言の言葉を聞いて、つかさたちは恐れました。そして、「われわれはこのすべての言葉を、王に報告しなければならない。しかし、あなたとエレミヤは身をかくしなさい。王に殺されるといけないから」といいました。

 つかさたちは巻物を安全な場所にかくしてから、王のところにいき、ユダの民が罪を悔い改めなければ、くだってくるとエレミヤの預言した罰について話しました。

 王は、書記に巻物をもってこさせました。王は、火の燃えている炉のまえにすわって、書記の読みあげる預言に聞き入りました。
 王の父ヨシヤは、宮で見つかった律法の書に書いてあることを聞いて、悲しみと恐れのうちに衣を裂いたものです。ところがこの王は、神さまを恐れませんでした。書記が3、4ページ読むと、エホヤキム王はあざけるようにその巻物をとって、そのページを小刀で切り、炉に投げ入れました。こうして次々にページを焼いて、ついに巻物全部を焼きつくしました。

 それから王はエレミヤとバルクを捕えるように、兵隊たちに命じましたが、主がエレミヤとバルクをかくされたので、見つかりませんでした。

 神さまは、エレミヤに、「ほかの巻物をとり、初めの巻物にあったと同じことを書き記しなさい。エホヤキムに『あなたはこの巻物を焼いて、警告を受け入れなかった。そのため、あなたのあとに治める子はいない。あなたの死体は捨てられ、昼は暑さにあい、夜は霜にあう』といいなさい」といわれました。