2010年8月14日(土)ルカ1章(1) 確実なもの


そこで、敬愛するテオフィロさま、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、順序正しく書いてあなたに献呈するのがよいと思いました。お受けになった教えが確実なものであることを、よく分かっていただきたいのであります。(ルカ1:3-4)

 意地悪な言葉や不親切な行為は、深く確かな傷跡を心に残します。やがて波紋が池全体に広がるように、一つの罪深い行為は、周りを悲しみと苦しみで満たします。この罪の現実が、社会を覆っています。罪とは、心の迷いではなく、現実そのものであり、リアル(確か)なものです。

 ですから、「信じる者すべてに救いをもたらす神の力」(ロマ1章16節)である福音も、「確実なもの」として提示されねばなりません。ルカは、その思いから、テオフィロが受けそして信じた福音の出来事を、初めから詳しく調べて、順序正しく書くことを、自分に課した条件としています。どんな疑いにも耐える堅固な事実が、提示されています。

 この福音書の書き出しは、この後に展開される、救いの壮大な物語を暗示する、オペラの序曲のように不可欠な部分です。ここから、福音書執筆に込められたルカの熱意と願いを窺い知ることができます。キリストの言葉と御業は、どれをとっても驚くべき恵み、伝えるべき福音です。その確かさのなかへ、テオフィロだけでなく、私たちも招かれています。