2015年8月31日(月) サムエル上21章 神の見えざる御手は裏側からも


ダビデは立ってその日のうちにサウルから逃れ、ガトの王アキシュのもとに来た。…「この男はかの地の王、ダビデではありませんか。」…ダビデはこの言葉が心にかかり、ガトの王アキシュを大変恐れた。そこで彼は、…彼らに捕らえられると、気が狂ったのだと見せかけ…た。(サムエル上21:11-14)

 逃亡していたダビデは祭司アヒメレクを訪ね、食糧と武器を得ます。さらに旅を続け、皮肉にも、身の安全のためにペリシテ領に行きました。ところが、何と、サウルの憎悪の元となったあの女性たちの歌、「サウルは千を討ち、ダビデは万を討った」という歌がそこにも聞こえていたのです。ダビデはガトの王アキシュを大変恐れ、捕らえられると、身の安全のために狂態を演じ、アキシュに嫌われ退去させられようとします。霊にでもとりつかれていると思われたようです。

 ダビデはアヒメレクにもアキシュにも、決して真実を語っていません。恐れから来る窮余の一策です。しかし、それによって相手に損害を与えた訳でも、名誉を傷つけた訳でもありません。勧められることではないにしても、保身のための欺瞞などと見るのは不適当です。アキシュの所に来て無事にそこを去ったのは、将来起こる、より公式な出会いと別れの伏線でした(27、29章)。また食料と武力は国政の基礎です。

 このことは、将来の王職への遠い備えとなりました。神の見えざる御手は確かにダビデを導いていたのです。