キリストへの時間 2013年9月15日(日)放送 キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

黒田朔(清和学園校長)

黒田朔(清和学園校長)

メッセージ: 池永ご夫妻のこと

 皆さんお元気ですか。わたしは清和女子中高等学校の校長、黒田朔と申します。
 今月は、明日迎える敬老の日にちなんで、「素敵な年のとり方」と題してお話をしています。

 今日は池永夫妻をご紹介します。わたしがハワイのマキキ教会に赴任したのは今から30年前、1983年のことでした。移民一世のメンバーの中で池永夫妻は二世で、一世代若い夫婦でした。二人が育ったのは、プランテーションと呼ばれるサトウキビ農園で、ハワイの田舎、生活はお世辞にも豊かだとはいえませんでした。器用なご主人の実さんは魚の行商、奥さんのシゲさんは上手なやりくりで子どもを育て、家庭を支えました。学歴といったものこそありませんでしたが、本当に賢いご夫妻でした。
 その賢さはご夫妻の生き方の随所に見られました。その一つが大切なものを選ぶ決断をするということでした。子育てが一段落した時、長年の夢であった日本庭園造りを学びたいと決断。夫婦で日本へ学びに来ました。そこで得たセンスと持ち前の器用さを生かし、灯篭、泉水にかける橋、また置物や和風の花台、風流な郵便受けなど次々と作り上げては蚤の市に店を出して皆さんから喜ばれました。

 池永さん達夫婦は、祈祷会には忠実でしたが、蚤の市が一番忙しい日曜日は、生活のためと礼拝には来れませんでした。そのご夫妻にとっての最大の楽しみはクリスマス。子ども、孫達が全員集まるのです。
 ところが、ある年のクリスマスにオレゴンの長男、フランシスの家族だけはみえませんでした。今頃どうしてるかな、と気になってたまりません。ちょうどそこに、フランシスから手紙が届いたんです。それも、大きな家族の写真が入っての手紙でした。  

 その時、実さんは一つの決断をしました。
 来年からは日曜の礼拝を守ろう。理由は親の自分でさえ、子どもが写真を送ってくれただけでこれほどうれしいのなら、わたし達が礼拝に出たら、きっと神さまは喜んでくださる。もう生活のための商売です、という言い訳はやめよう。
 それから一年余り、毎週の礼拝を休まずに守る中で、実さんは白血病にかかりました。そして「もう何も思い残すことも、心配もありません。」といって天国へ召されました。気付いたことはその都度決断し、実行に移す。そんな人生でした。ご主人を天国に送った後、奥さんのシゲさんも見事な決断を下しました。

 ある日、教会から通りを越えた目の前のアパートに引っ越してきたのです。「これからは教会がわたしの家族です。」そうおっしゃいました。
 マキキ教会にはほとんど毎日プログラムがあります。シゲさんは月曜と土曜日以外、5日間教会で過ごしました。雨の日も暑い日も、道を渡れば教会ですから簡単です。中でも、シニアの集い「のぞみの会」は彼女にとってファミリーでした。96歳になって胃の摘出手術を受けても、シゲさんは教会の目の前にある、自分一人暮らしのアパートに戻りました。それは「アローハ!皆さん今日はお元気ですか?ブルースカイ、ブルーオーシャン、こんな気持ちのよいハワイに住んでいてわたし達幸せですね。幸せならみんなで賛美しましょう。」という彼女の日本語と英語の司会が皆さん大好きで、「のぞみの会」の誰もが自分を待っていてくれるというのを知っていたからでした。

 今年の初め、それでも力の限界を感じたシゲさんは、もう一つの決断をしました。真珠湾を見下ろす娘の家に移ろう。そこで彼女は言いました。「天国に行くのはまだかね。」そう聞くシゲさんに娘のパットは言ったんです。「ママ、それはきっとまだ神さまの御用がママには残っているからよ。」
 この3月、わたし達はシゲさんを訪ねました。その時彼女は言ったんです。「悲しまないで、お祝いしてください。」そして彼女は天国へと旅立ちました。彼女を思うとき、この聖書の言葉を思い出します。マタイの福音書6章33節。「だから、神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます。」(新改訳)

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