憎しみの果て | サムエル記下 13章

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サムエル記下 13章

その後、こういうことがあった。
そして、アムノンは激しい憎しみを彼女に覚えた。その憎しみは、彼女を愛したその愛よりも激しかった。日本聖書協会『聖書 新共同訳』 サムエル記下 13章1節、15節

憎しみの果て

まるで小説の題材になるようなことが、ダビデの子どもたちの間で起きました。

ダビデ家の長男アムノンは異母兄妹タマルに抱いていた強い恋心を、凌辱という行為をもって暴発させます。しかも、その結果、恋心を激しい憎しみへ変化させるという二重の辱めを、アムノンはタマルに強いました。

この記事から、ダビデの子どもに対する躾のまずさ、あるいはその遠因となった、ダビデの多妻に対する批判を読み取ることができるでしょうか。それらが、このような惨劇を生んだのだ、と。

ただし、古代国家において、王族が多くの妻妾を持ち、異なった母から生まれた兄妹が結婚する、それは珍しいことではありませんでした。非難されるべきは、アムノンが従兄弟の策略にそそのかされ(5節)、妹のタマルを欺き、欲望を満たしたこと、さらに目的を果たすとそのタマルを捨ててしまったことです。ここには人間を単なる欲望の対象としてしか見ず、自らの都合だけで生きる人間の身勝手さが浮き彫りになっています。この醜悪な事件は、その人間の罪の性質を暴露しているのです。

金田 幸男(西谷伝道所)