キリストへの時間 2013年12月8日(日)放送 キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

山下正雄(ラジオ牧師)

山下正雄(ラジオ牧師)

メッセージ: 主イエスと出会った人々-ヨセフの場合-

 おはようございます。ラジオ牧師の山下正雄です。
 今月はイエス・キリストに出会った人々を取り上げています。きょうはイエスの父ヨセフです。

 ヨセフはイエス・キリストの父親とはいえ、聖書全体の中では、影の薄い父親であるかもしれません。なぜなら、キリストは聖霊によって身ごもったのですから、父ヨセフとは血のつながりが直接あるわけではないからです。しかも、ヨセフの姿はいつの間にか聖書の表舞台から消えています。いつ亡くなったとも、どうして亡くなったとも記されていません。母マリアの登場回数と比べたら、比較にならないくらい、ヨセフの活躍は記されません。ただ、マリアと婚約時代に起こった不思議なことのために、深い苦悩を抱えて大きな決断をしなければならなかったヨセフの姿が記されているだけです。

 不思議な出来事というのは、婚約時代のマリアの身に救い主が宿ったということです。先週もお話しした通り、聖書はそれを聖霊による身ごもりだと告げ、後の教会はその出来事を「処女降誕」と呼び習わしています。しかし、それをどう呼ぼうと、どう説明しようと、当事者のヨセフにとっては、受け入れがたい程の衝撃でした。聖書によれば、ヨセフは自分の婚約者を密かに離縁しようとまで思い悩んだとあります。表沙汰にはしないだけ、マリアに対するヨセフの思いやりと優しさがそこにはあります。
 天からの使いが、ヨセフに事柄の事情を説明したとしても、それでも誰もが納得できることではありません。そういう意味では、この大きな出来事を引き受け、受け入れたヨセフは、マリアに勝るとも劣らない信仰の人でした。

 救い主イエスの誕生を巡る記事の中で登場したヨセフでしたが、そののち、聖書はヨセフについてほとんど沈黙しています。ただ、知られているのは、ヨセフが大工であったということです。人々がイエスのことを「大工の息子」と呼んでいるからです(マタイ13:55)。
 もし自分の結婚相手との間に生まれる子供が、救い主でないとしたら、ヨセフにもごく平凡な、しかし幸せな家庭を築く夢があったことでしょう。息子に家業を継がせ、親子ともども村の人たちの中で暮らしていく幸せを夢見ていたに違いありません。しかし、そうした夢は婚約時代から既に砕かれていました。

 イエス・キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受け、公の活動に入られたとき、イエスはおよそ30歳であったと聖書は記しています(ルカ3:23)。そうであるとすると、救い主としての息子の活動を目にすることができたのは、おそらくヨセフが40代も後半になってからのことです。あるいは、福音書にはその後のヨセフのことがほとんど出てこないことから推測すれば、ヨセフは息子の活躍を見ないまま、世を去っていたのかもしれません。
 もしそうだとすれば、ヨセフはどんな思いで息子と接し、息子を育てていたのだろうかと思います。

 その当時の平均的な寿命から考えると、30歳になるまで救い主らしい働きにつかなければ、その後もつかないと思うのが当たり前だったことでしょう。そういう意味では、ヨセフの心は何度となく揺らいだかもしれません。ほんとうにこの子は神が送ってくださった救い主なのだろうかと。
 もちろん、これはわたしの推測にすぎません。ヨセフは少しも疑わずに、息子がいつか神の約束通り、救い主メシアとしての本領を発揮する時がくることをずっと信じて待っていたのかもしれません。
 信仰が揺らいだにしろ、そうでないにしろ、家長として、神から授かったイエスを、家族の一員として責任をもって育ててきたヨセフも、やはり信仰者の模範と言うことができるでしょう。

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