熊田なみ子のほほえみトーク 2014年3月25日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会175「計略の失敗(2)」
(「母と子の聖書旧約下」75章/サムエル下18-19章)

 アブサロムは、ホシャイの忠告に従い、大軍を率いてヨルダン川を渡ってきました。そして、ダビデのいる町に近い大きな森で戦う準備をしました。ダビデの軍は、アブサロムの兵を町の外で待ちうけました。ダビデは、何千という自分の兵が出ていくのを町の門に立って見送りました。彼は、3人の将軍に、「私のため、若者アブサロムを穏やかに扱うように」と特に言いました。アブサロムは、悪い人であったのにもかかわらず、ダビデは彼を大そう愛し、彼を傷つけたくなかったのです。

 両軍は森で戦い、アブサロムの軍が負けました。死者は2万人に及びました。ダビデの軍から逃れるため、アブサロムは自分の騾馬を走らせました。ところが大きい樫の木の下を通り抜けるとき、木の枝に引っかかってしまったのです。アブサロムの長い髪の毛は、木の枝に絡まり、彼は天と地の間にぶら下がり、騾馬はそのまま走り去ってしまいました。

 一人の若者がこれを見て、ヨアブのもとに、「アブサロムが樫の木にかかっているのを見ました。」と言いに来ました。ヨアブは厳格な軍人で、鉄のように心の堅い人でした。彼は、アブサロムは死に値すると考えましたから、彼をやさしく扱うつもりはありませんでした。「どうして彼を殺さなかったのか。」と尋ねました。「私は銀10シケルと帯一筋を与えたのに。」しかし、若者は答えました。「たとい銀10シケルを下さっても、手をだして王子を殺すことはしません。王は我々の聞いているところで、あなたがたに『誰にも若者アブサロムに手出しをさせるな』と命じられたからです。もし私が殺したなら、私はきっと命を失います。王がそのことを耳にし、あなたは自ら立って私を責められるでしょう。」

 ヨアブは耳を貸しませんでした。アブサロムのつり下がっている大きな樫の木の所に急ぎ、三筋の投げやりを取って、王子の心臓に突き通しました。そこで、ヨアブの護衛の十人の若者がこれを取り巻き、アブサロムを殺し、その死体を木から降ろして穴に投げ入れました。

 ヨアブは戦いの終わりを告げるラッパを吹きました。アブサロムが死んだので、もう戦う必要はありません。ラッパの澄んだ音が森中に響き渡ると、兵士たちは戦いをやめてヨアブのもとに集まってきました。一人ひとり石を拾って墓に投げ入れ、アブサロムは沢山の石の下に埋められてしまいました。アブサロムの様子をダビデ王に知らせていた青年アヒマアズは、戦争に勝ったことを王に告げに走らせてほしいとヨアブに頼みました。しかしヨアブは、息子の死を聞いたらダビデが大そう悲しむことを知っていたのでその願いを拒みました。しかし、アヒマアズは若く、戦いに勝ったことを一番に王様に告げたくてたまりませんでした。ヨアブもとうとうその熱心に負けました。アヒマアズは、最初の使者の後を追い、まもなく追い抜いてしまいました。

 ダビデ王は、戦いの知らせを待って、町の門の所に座っていました。門の屋根には見張り人が立っていました。見張り人は王に「一人の人が見えます。走ってきます。」と告げました。王は、「もし一人ならば何か特報を持っているであろう。」と言いました。見張りはまたダビデに声をかけました。「もう一人見えます。一人で走ってきます。」王は答えました。「それも、知らせを持ってくるのだ。」見張り人はまた言いました。「真っ先に走ってくる人は、アヒマアズのようです」と。「彼は良い人だ。良いおとずれを持ってくるだろう。」と王は答えました。声が届くほど近くなると、アヒマアズは「万事、成功です」と叫びました。そして、ひれ伏して言いました。「あなたの神、主はほむべきかな。主は王に敵して手を挙げた人々を引き渡されました」と。
 ダビデは尋ねました。「若者アブサロムは大丈夫か」と。「ヨアブが僕を遣わす時、私は大きな騒ぎを見ましたが、何事であったか知りません。」とアヒマアズは答えました。「もう一人の使者が来るまで待て。」と王は命じました。もう一人の人が息せき切ってやってきて「我が君、良いおとずれを受けてください。主は今日、全てあなたに敵して立った者どもに仇を討たれました。と言いました。王は、「若者アブサロムは大丈夫か」と尋ねました。「全てあなたに敵して立つ者は、あの若さまのようになりますように」と答えました。

 これを聞いて王は嘆き悲しみました。彼は門の上の小部屋に行き、頭を抱えて、「我が子アブサロムよ、我が子よ、我が子アブサロムよ、ああ、私が代わって死ねばよかったのに。アブサロムよ、我が子よ、我が子よ」と泣きました。ダビデ王は、勝利のことや、自分の王国のことは考えないで、ただ自分の大事な息子のことで頭がいっぱいでした。

 兵士たちは、自分たちの愛する王の安全を喜びながら戦場から帰ってきました。ところが「アブサロムよ、我が子よ、我が子よ」という悲しげな声を聞いて、その喜びは悲しみに変わってしまいました。あの強くて厳しい軍人ヨアブは、彼なりの荒っぽいやり方で、ダビデの本当の友人であることを示しました。彼はダビデに、「あなたはきょう、あなたの命とあなたの息子、娘たちの命、及びあなたの妻たちの命を救った全ての家来を辱められました。それは、あなたが自分の憎む者を愛し、自分を愛する者を憎まれるからです。もしアブサロムが生きていて、我々が皆、今日死んでいたらあなたの目にかなったのでしょう。今立って出て行って、兵隊たちにねんごろに語ってください。もしあなたが出られないならば、今夜、あなたと共に留まるものは一人もいないでしょう。これは今までにこうむられたすべての災いよりも、あなたにとって悪いでしょう。」と言いました。この忠告は厳しいものでしたが大変賢明なものでした。ダビデ王は涙をふき、下におりて自分の兵士たちを迎えるため門の所に座りました。

 数日もたたないうちにイスラエルの国中あちこちで「我々をペリシテ人の手から、またあらゆる敵から救い出された王は、アブサロムのために国の外に逃げておられる。しかし、アブサロムは戦いで死んだ。さあ、われわれの王をエルサレムに導き帰ろう」という声が聞こえてきました。そこでダビデとその全家は、エルサレムに帰ることにしました。ユダの人々は自分たちの大好きな王が戻ってくるのを喜び、部族全体でヨルダン川まで迎えに出ました。渡し舟で王や家来たちは川を渡りました。ダビデが上陸すると、喜びの叫び、手を叩く音があたりに響き渡りました。人々は歌ったり、踊ったりしながら、王の行列について走って行きました。

 喜びの代わりに、恐れおののきをもってダビデ王を迎えた人が一人いました。それは、王が都を離れるとき、ダビデに石を投げ呪ったシメイです。恐れをもってダビデを迎えにきたのも無理はありません。シメイは、最初に王に話しかけた人の一人です。彼は地面にひれ伏し、自分の取った恥ずかしい行動を許してくださるように王に頼みました。「僕は自分が罪を犯したことを知っています。私はそれを悔い、真っ先に来て王を迎えるのです。どうぞ王が僕の行った悪いことを思い出さないでください。」ダビデの将軍の一人は「シメイは殺されるべきではありませんか」と言いました。しかし、人々の大歓迎に非常に喜んだダビデは、この良い日にしみをつけたくありませんでした。そこでシメイに「あなたを殺さない」と言いました。

 ヨナタンの足の悪い息子が王を迎えに来たとき、ダビデは「メピボセテよ、あなたはどうして私と共に行かなかったのか」と聞きました。「私の僕は私のことを偽って話したようです。私は出かけたのですが足が悪いため、ろばに乗らなければなりませんでした。」とメピボセテは答えました。皆さんも覚えているでしょうが、王はジバに、その主人の土地を全部取ってよいと言ったのでした。しかし、メピボセテ自身からダビデに背いたわけではないことを聞いて、王は「あなたとジバはその土地を分けなさい。」と言いました。
 この時、メピボセテは父親ヨナタンの優しく寛大な性質を受け継いでいたことを示しました。「王が安らかに家に帰られただけで私はとても喜んでいます。ジバに土地をみな取らせてください。」と言いました。

 ダビデについて川まで来た老人が一人いました。これはダビデに家来たちのためにといって食物を贈ったバルジライです。王はその老人に「私と一緒にエルサレムまで来て私と共に住みなさい。」と言いました。しかしバルジライは、「私はなお何年生きながらえるでしょうか。私は今80歳です。私は王宮での生活に馴染めないでしょう。どうぞ、僕を自分の町に帰えらせてください。ただし、ここに私の息子がいます。王と共に彼を渡って行かせてください。」と言いました。そこでダビデは老人に口づけし、彼を祝福しました。バルジライは自分の家に帰っていきましたが息子はダビデのともをしました。

 ユダの人々は、エルサレムまで叫んだり、歌ったり、手を叩いたり、大好きな王の帰還を喜んでついてきました。ダビデはエルサレムにある王座に座りました。彼は自分を助けられた神様を称え「彼は高いところから手を差し伸べて私を捕え、大水の中から私を引き上げ、私の強い敵と、私を憎む者とから私を救われた。」と歌いました。

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