熊田なみ子のほほえみトーク 2014年12月23日(火)放送

熊田 なみ子(スタッフ)

熊田 なみ子(スタッフ)

小さな朗読会184「イスラエルの悪王物語」
(「母と子の聖書旧約下」81章)

 イスラエル王国の北に、スリヤの大帝国がありました。イスラエルより遥かに大きい国でした。その王は、ベネハダデといいました。

 ベネハダデ王は、兵を集めてイスラエルに戦いをいどんできました。ほかに、馬や戦車をもった王が32人、同行しました。この兵隊、馬、戦車の大軍が、アハブの主都サマリヤにやってきて、町をかこみ、攻撃しました。
 アハブは、サマリヤを囲んだ大軍を見て、すっかり恐れてしまいました。ユダの王は自分の国をかため、10万の兵を訓練して軍隊をつくりましたが、アハブは自分の国をまもるために何の手段もこうじていませんでした。彼は、わずか7千人の兵しかもっていませんでした。

 ベネハダデは、ごう慢で残酷な王でした。彼はアハブ王に大へん失敬なメッセージをよこしました。「ベネハダデはこういう、『おまえの金銀はわたしのもの、またおまえの妻たちと子供たちのもっとも美しい者もわたしのものである』」と。

 アハブはこわくてふるえました。どうしたらよいのでしょう。頼れる神はありません。彼ときさきのイゼベルは、神さまの祭壇をこわしてしまい、イゼベルは神さまの預言者を見つかりしだい、殺してしまっていました。バアルがイスラエルの主なる神にとって代わりました。では、その偶像に助けを求めましょうか。いいえ、アハブはバアルにいっても無駄なことを知っていました。
 彼は、降服するしか方法がありません。彼の軍隊は、馬や戦車や、何千何百もの兵をもっている32人の王といっしょのベネハダデと戦うのには、とてもかないません。彼はベネハダデ王にけんそんな返事をおくりました。「王、わが主よ、仰せのとおり、わたしと、わたしのもちものはみなあなたのものです」といいました。

 では、ベネハダデは、した手にでた返事に満足したでしょうか。
 彼は弱い者いじめでした。わずかな兵しかもたないアハブ王は、歯のたたないことを知っていました。そこで、彼はアハブ王に、また失敬なメッセージをよこしました。「あすの今ごろしもべたちをおまえにつかわす。彼らはおまえの家と、おまえの家来の家を探って、すべて気にいるものを手に入れて奪い去る。」

 こんどは、アハブ王は国の長老たちを全部よびよせて、ベネハダデのいったことを告げました。みなは、「彼のいうことを聞いてはなりません」といいました。
 アハブ王はようやく、少し勇気をだして、ベネハダデに「あなたが初めに要求されたことはみないたしましょう。しかし今度のことはできません」といってやりました。

 これはベネハダデの思うつぼでした。これで、アハブをやっつけるいい口実ができたわけでした。彼は32人の王をつれて、アハブとその兵を粉々に砕いてしまうでしょう。彼は、自分の兵隊一人ひとりに、一握りずつのほこりものこらないほど、サマリヤはこなみじんにされるだろうと、鼻高々にこたえました。

 アハブは、今は国の長老たちが自分のあと押しをしてくれているので、まえより勇気が出、けんそんな答えを返すかわりに、戦うまえから自慢しないようにとベネハダデにいいました。

 このごう慢な返事がかえってきたとき、ベネハダデとその32人の王は酒を飲んでいました。それでも彼は王たちに、「戦いの備えをせよ」といいつけました。

 もし、何ごとも起こらなければ、このごう慢なこたえを聞いたベネハダデとその32人の王は、計画どおりに、アハブとその7千人の兵を負かしたことでしょう。ところが偉大な神は、アハブに助けの手をのべられました。神は王に預言者をおくり、神がイスラエル人を助けるといわれました。
 アハブは、「だれに戦わせましょうか」と聞きました。
 預言者は、「地方の代官の息子たちにさせよ」といいました。
 アハブはすぐさま、地方の代官の息子たちを召集しましたが、何人いたと思いますか。たったの232人でした。
 昼までにイスラエル側の準備ができました。7千人の小さな軍隊は、スリヤ人の大軍に立ち向かうため、町の外にでてきました。

 ベネハダデとその32人の王は、天幕で飲んでいました。だれかが、サマリヤの町から兵隊たちがでてきたと告げました。半分酔っていたベネハダデは、自分ででかけてみないで、「和解のためにでてきたのであっても、戦いのためにでてきたのであっても、生どりにせよ」と命令をくだしました。
 なぜ、ベネハダデは、兵たいたちを生どりにしたかったのでしょう。
 そのころは、捕虜を殺すまえに、拷問にかけることを楽しんだのです。このごろは、イエス・キリストの愛のため、人々はそんなに残虐でなくなりました。わたしたちは苦しみを見るのがきらいです。しかし、そのころは、人々は他人を苦しめるのを楽しみにしました。

 イスラエル人は、自分たちの先祖の神が自分たちを助けているのを知っているので、大そう勇敢でした。232人の地方代官の息子も、7千人の兵も、一人ひとり、一人のスリヤ兵をえらんでそれと戦いました。
 スリヤの兵たちは、イスラエルの兵の勇気を見て、たじたじとなりました。気の毒なこれら異教の兵たちは、助けてくれる神をもちませんでした。また、兵たちを導いているはずの王もいまは酔払っています。あの大軍隊も、おじけづいて逃げ腰の兵隊の大混乱となりました。ベネハダデ王まで馬に飛び乗って逃げていきました。イスラエル人は、スリヤ人を追い、たくさんの兵を殺しました。

 なぜ神さまは、主を忘れてその祭壇をこわし、偶像バアルを礼拝していた悪いアハブ王を助けたのでしょう。
 2つの理由がありました。イスラエル人は、神さまを忘れたものの、やはり神さまの民です。神さまは彼らを愛し、彼らが完全にほろぼされてしまうことを、願われませんでした。まだバアルを礼拝していない民が、7千人もいます。神さまがイスラエル人の敵を退けるのを見て、神さまのもとにもどってくる人がまだいるかもしれません。
 もう一つの理由はこれです。へブル人は、神さまの特別な民ではありましたが、全世界も神さまのものです。イスラエルのすぐ隣りに住んでいたスリヤ人は、このすばらしい神について何か学びとったに違いありません。主はスリヤ人をはじめ、全世界の国々にご自身を知らせたいと思われました。


 神の助けにより、イスラエル人はスリヤを負かし、追い帰しました。主は預言者をとおしてアハブ王に「来年の春にはベネハダデが、あなたのところに攻めのぼってくるから、あなたの軍隊と国を強めて準備しなさい」といわれました。

 ベネハダデ王がダマスコに、軍隊の残りを連れてもどってくると、その家来たちは、「イスラエルの神は山の神ですから、彼らがわれわれより強かったのです。もしわれわれが平地で戦うならば、必ず彼らよりも強いでしょう。あなたが失った軍隊にひとしい軍勢を集め、兵の扱い方をしっている者を長におきなさい。こうしてわれわれが平地で戦うならば、必ず彼らよりも強いでしょう」といいました。
 ベネハダデは、そのとおりにしました。翌年、彼は、ふたたびイスラエル人と戦うためにやってきました。今度は、サマリヤまではきませんでした。サマリヤは丘の上にあったからです。彼はガリラヤ湖のすぐ東の平地にきました。

 イスラエルの民は、スリヤの大軍を迎えるのに、少人数の軍隊しかだせませんでした。
 しかし、ふたたび預言者がアハブ王のところにきて、「主はこう仰せられる『スリヤ人が、主は山の神であって、谷の神ではないといっているから、わたしはこのすべての大軍をあなたの手にわたす。わたしが主であることを知るようになるであろう』」といいました。
 こうして、イスラエル軍はふたたび、大きな戦いに勝ちました。信じにくいような数字ですが、その日10万人のスリヤ軍が戦いで死んだのです。
 あとのスリヤ軍は、安全を求めて近くの町に逃げました。ところが、その町の城壁がくずれて、2万7千人の兵がその下敷きになり、死にました。

 ベネハダデ王はどうなったでしょう。
 王はある家に逃げ込み、奥の部屋に身をかくしました。まもなくイスラエル人に見つかり、殺されることを知っていました。ところが、まもなく、彼の家来が何人かきて、「イスラエルの家の王たちは、あわれみ深い王であると聞いています。それで、われわれの腰に荒布をつけくびになわをかけて、イスラエルの王のところへいかせてください。たぶん彼はあなたの生命を助けるでしょう。」といいました。
 ベネハダデは、ほかに道はないと知っていました。そこで、家来たちが、荒布を素肌につけなわをくびにかけるのをゆるしました。彼らはアハブ王のところにきて、「あなたのしもべベネハダデが、『どうぞわたしの命を助けてください』といっています」といいました。
 アハブは、「彼はまだ生きているのですか。彼はわたしの兄弟です」といって、自分の車にいっしょに乗るようにさそいました。

 何とアハブは、間違ったことをしたのでしょう。ベネハダデは大そう悪い王だったので、神さまは、彼を死をもってこらしめたかったのです。
 神さまは、アハブのところに預言者をおくり、「あなたはこの人を放していかせたので、あなたは彼に代わって死ななければならない」といわれました。
 アハブはふきげんに、自分のサマリヤの家に帰りました。彼はできるかぎり、自分の思いから、また自分の国から神さまを除外しようとしてきましたが、神さまから逃れることができません。神さまは今でも彼とイスラエルの国を治めていらっしゃいます。神さまはたえず、主のみこころを預言者をとおしてアハブに伝えられたのです。


 エズレルのアハブの城の隣りに、ナボテという人がぶどう畑をもっていました。この土地はナボテが先祖から受けついだものです。みなさんもおぼえているでしょう。モーセの律法によって、自分の土地を他人に売ることはできませんでした。その人の土地は、代々その人の家系にうけつがれてきました。

 アハブ王は、ナボテの土地が自分の城のとなりにあったので、野菜畑にほしいと思いました。彼は、もっとよいぶどう畑とその土地を交換しないかと、いいました。あるいは、ナボテの希望によっては、お金でその畑を買い取るとも、アハブは申しでました。
 ところがナボテは売りません。「わたしは先祖の嗣業を、あなたにゆずることを断じていたしません」と彼はいいました。
 アハブは失望し、ふきげんになりました。彼はうちに帰り部屋にはいって、横になりました。アハブは顔をそむけ、食事にもでてきません。イスラエルの王は、すねていたのです。
 その妻イゼベルは、どうしたのか、様子を見にきました。「あなたは何をそんなに悲しんで食事をなさらないのですか」と聞きました。
 アハブは「わたしは、となりのナボテの畑をゆずってくださいといったが、ゆずってくれない」と答えました。
 イゼベルは、軽べつをこめた目でアハブを見ました。「それだけのことですか。あなたが今イスラエルを治めているのですか。起きて食事をなさい。わたしがナボテのぶどう畑をあなたにあげます」と彼女はいいました。

 イゼベルは異教の国からきた人なので、モーセの律法など尊重していませんでした。持ち主が売りたかろうと、売りたくなかろうと、王は自分の欲しいと思った土地なら、どこでも勝手に手に入れてよい、と考えていました。王は、たのむ必要などありません。
 イゼベルは、町の長老たちに手紙を書き、それにアハブの名を書き、アハブの印をおしました。その手紙には、「断食を布告してナボテを民のうちで高いところにすわらせ、また2人のよこしまな者を彼のまえにすわらせ、そして彼を訴えて、『あなたは神と王を呪った』といわせなさい。こうして彼を引きだし、石でうち殺しなさい」と書いてあります。

 長老や身分の高い人たちは、イゼベルにそむくことを恐れたので、断食を布告し、ナボテを民のあいだの高い所にすわらせました。それから、お金でやとわれた2人の悪人がはいってきて「われわれは、ナボテが神と王を呪うのを聞いた」といいました。
 モーセの律法の命じるままに、民はナボテを町の外に連れ出し、石でうち殺しました。犬がきて、石だたみに流れたその血をなめました。
 そのあとで、ナボテが石でうち殺されたことがイゼベルに伝えられました。これを聞いて、イゼベルはアハブに、「立って、ナボテが、あなたに金でゆずることを拒んだぶどう畑をとりなさい。ナボテは生きていません。死んだのです」といいました。

 主の言葉がエリヤにのぞみました。「立って下っていき、アハブに会いなさい。彼は、ナボテのぶどう畑を取ろうとしてそこへ下っている。あなたは彼にいわなければならない、『主はこう仰せられる。犬が、ナボテの血をなめた場所で、あなたの血をなめるであろう』」と。
 エリヤは立って、きびしい顔でぶどう畑にはいっていきました。ぶどうを見ていたアハブはだれかが自分のうしろに立っていることに気づき、ふりむきました。そこには、何年か会っていない、きびしい、いかめしいエリヤがいるではありませんか。
 アハブは、「わが敵よ、ついに、わたしを見つけたのか」と、ふるえながらたずねました。「見つけました。あなたが、悪に自分を売ったので、神はあなたを罰せられます。主はあなたの息子をみな滅ぼされます。あなたが主を怒らせたので、あなたの家のものはだれも残されません。あなたの子が町で死ねば犬が喰い、野で死ねば鳥が喰うでしょう。犬はエズレルの城壁でイゼベルを喰うでしょう」とエリヤはいいました。

 アハブのように悪くて、主のまえで悪をなし、悪い妻のいうとおりにした王は、ありませんでした。彼は、主がカナンから追い出された異教国と同じように、偶像を礼拝しました。
 それでも、アハブはイスラエル人で、妻イゼベルのような異教徒ではありませんでした。彼は、神さまが世を治めることを知り、神さまの力を見ています。エリヤのおそろしい言葉を聞いて、アハブは自分の着物を裂き、荒布を身にまとい、食物を断ち、だれにも会いませんでした。
 主はエリヤに「アハブがわたしのまえにへりくだっているのを見たか。彼がわたしのまえにへりくだっているので、わたしは彼の世には災いを下さない。その子の世に災いを家に下すであろう」といわれました。

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