キリストへの時間 2022年2月6日(日)放送  キリストへの時間宛のメールはこちらのフォームから送信ください

小澤寿輔(高知教会牧師)

小澤寿輔(高知教会牧師)

メッセージ: 黄金律

【高知放送】
     

【南海放送】
     

 おはようございます。高知市上町4丁目にあります日本キリスト改革派高知教会の小澤寿輔です。
 皆さんは、「聖書の教えの中で最も有名な箇所はどこ?」と聞かれたら、どの箇所を挙げるでしょうか。

 今朝は、その中の一つ、マタイによる福音書7章12節の御言葉に聴きたいと思います。「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」これは、「黄金律」と呼ばれます。なぜなら、それは、多くの宗教、道徳や哲学にも見出される、倫理学的言明と言えるからです。また、「内容が深くて、人生にとってこの上なく有益な教訓だから」とも言われるからです。

 しかし、それだけではありません。この律法が、積極的な愛の行動を勧めているからです。世の中では、これによく似た格言を耳にすることがあります。例えば、ユダヤ教では、「あなた自身の憎むことを、あなたの隣人にしてはならない」と教えます。儒教の開祖と呼ばれる孔子も、「己の欲せざるところを、人に施すなかれ」と教えます。ヒンドゥー教でも、「人が他人からしてもらいたくないと思ういかなることも他人にしてはいけない」と教えます。イスラム教では、「自分が人から危害を受けたくなければ、誰にも危害を加えないことである」と教えます。日本の社会でも、「人の嫌がることをするな」とか、「人に迷惑をかけるな」とよく言いますね。これらの格言は、常識的な戒めとしてよく耳にします。

 しかし、これらはどれも消極的なのです。これらの格言が言いたいことは、「人に害を与えるようなことをしない」ということです。つまり、「相手に対してマイナスの行為をしていたのをゼロにする」というだけです。それでしたら、当たり障りなく過ごすことはできるのかもしれませんが、相手に全く関心を示さず、無視して生きることだってできてしまします。それでは、人間同士の「関わり」あるいは「交わり」というものが全く生まれません。なぜなら、「無関心でいればそれで良い」ということになりかねないからです。

 イエス・キリストの黄金律は、これらの格言とは全く違います。「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」これは、積極的な教えなのです。人々の立場に自分自身を置いて、「自分だったら何をして欲しいか」ということを「人々にしなさい」というのです。「人に害を加えない」というゼロの状態を保つのと、「積極的に愛の手を差し伸べる」というプラスの行為をするのは、全く別のことなのです。さらに、この律法が「黄金律」と言われるわけは、道理にかなった分かり易さにあります。「自分にして欲しいことは何か。」これは、誰にでも分かることです。「他の人からどうされたいか」と自分に問いかけて、それと同じことを相手にしてあげるのです。他の人に自分を重ね合わせるだけですから、実に分かり易い教えですよね。この「黄金律」を、私たち一人ひとりが自らの生活に取り入れるならば、私たちの心と、私たちの生活は、大きく変わるでしょう。

 では、どうすれば、「黄金律」が教えるように生きることができるようになるのでしょうか。これは、「隣人を自分のように愛しなさい」というイエス・キリストの教えに置き換えることができます。つまり、「お互いに愛し合いなさい」ということなのです。「愛」というのは、受けたり注いだりするものなのですね。

 私たちは、愛をためる「器」のような存在です。自分の中から愛が、泉のように、無尽蔵に出て来るのではないのですね。たくさん注がれて、器が満たされると、外に流すことができるのです。もし泉のような無尽蔵な存在であれば、いつも内から溢れ出るのでしょうけども、私たちは「器」なのです。「器」は、無限に愛を注いでくださる神から、溢れるほどに満たしていただかなければ、愛を流すことはできません。まず、神と自分の関係がしっかりとできて、神から愛をいただくときに、初めて隣人に注ぐことができるのです。ですから、まず、イエス・キリストに目を向けましょう。「イエス・キリストとは、どういうお方かな」、「イエス・キリストは、私のために何をしてくださったかな」と問い続けましょう。

 イエス・キリストに捕らえられた人は、愛が注がれて、満たされて、自分もまた愛に生きて、周囲の人たちとの間に「愛の交わり」を作り出す者とされます。私たちも、そのような「愛の交わり」を作り出す者となることができます。ただ、注いでいただけば良いのです。

 まずはお近くの教会に行って、日曜日の礼拝に出席してみませんか。礼拝の中で、神に対して器を大きく備えて、愛をいっぱいに受け取り、神の愛で満たされましょう。



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